「なんかリンチとPTAが喧嘩しながら作ったトゥルーマンショーみたいな映画」脳内ニューヨークが面白いんだが。

妻と娘に去られ行き詰まった劇作家のケイデンは、舞い込んだ賞金をすべて注ぎ込み、脳内に描く理想のN.Y.を現実のN.Y.の中に作る。だがそこでは現実と虚構が交錯し始め…。(「キネマ旬報社」データベースより)

81 :名無シネマ@上映中[sage]:2009/12/17(木) 22:09:48
なんかリンチとPTAが喧嘩しながら作ったトゥルーマンショーみたいな映画だった。

↑も、ものすごい説得力のあるコメント…。いや、割とPSホフマンちゃんというだけで見た映画だったのですが、何かツボにはまってしまったみたいです。わけわからん・盛り上がりがない・監督のオナニーでつまらん、と一蹴する声も聞くのですが、私としては、考える要素詰め込みすぎのこの映画を、味が薄くなるまで噛みしめる旅に出たい気持ちでいっぱい。なんだけど、あんまり仲間がいなさそうなんだよねw需要はなくともやるぜやるぜ。

上コメントについて。確かに、デヴィッド・リンチっぽい要素いろいろ(シュルレアリスティックな描写、ものすごく印象的、象徴的なモチーフなど)あるし、ポール・トーマス・アンダーソン的な、悲劇なんだけど独特のニヒリズムでさらりとお洒落にコメディに料理している感じも似ている。特にマグノリア(好き映画ですぞ!)に雰囲気が似ているなあ。ストーリーは違うけれど、メッセージ「十人十色の人生、みんなが主人公」という部分では通じるものが。音楽がジョン・ブライオンで、ラストの女性ボーカルで泣かせる、というある意味直球の手が…(私は好きですけどね。嫌という人もいるのかな)というのもあるし。トゥルーマン・ショーは、まぁ入れ子構造というか劇中劇というか…です。あくまで役者ではなく、創造主としての苦悩の物語なので、ちょっと違うかな、とは思いますが。

原題はSynecdoche,New Yorkで、意味は「提喩」。いや、そんなの日本語でも知りませんよ。このページ→提喩(別名:シネクドキ・代喩)を読んでようやくわかったようなわからないような気分に・・・なってください!
邦題については「最悪!」と言ってる人もいますが、私は結構うまいタイトルだと思いますよ。語感もいいしね。脳内嫁、脳内彼氏、脳内NY!まあ日本版のプロモーションはこれ上滑りしてたんじゃないのか?と心配になりましたが。そんなキャッチーさ演出してタイアップとかしてw明らかに万人受けの作品じゃないのに。

  • 現実?妄想?

最初に見たときはケイデンの妄想や夢のシーンがふんだんに挿入されているのかな?と思ってしまいました。例えば、クレアの母の葬式に出席するケイデン。次のシーンはなんと結婚式。さらにさらに場面が切り替わると子供までできてる!怒涛の出来事に、一瞬「っていう刹那の妄想か?」と思ってしまうが、実際にものすごいスピードで年月が流れていくんだよ。ただし、ケイデンの頭の中では少々時間の経過に対してボケ気味なんですね。実際には1年間が立っているにも関わらず「妻が出て行って1週間」と発言したり、彼の中ではいつまでも娘は4歳の子供のまま。数年ぶりに再会したヘイゼルが別の家庭を築いている事に茫然としたり。自分だって年食ってどんどんジジイになってるのにね。主人公がそんなだから、観客もつられて混乱するのかな。この物語においてはほとんどが現実の出来事であると受け止めた方がよいと思いました。燃え続ける家、枯れるタトゥの花、クレアの背中の刺青なんかは妄想というより「誇張表現」でしょう。

  • 登場人物。

混乱するのは、ホフマンちゃんがメタボの持病もち親父のくせにモテモテ…じゃなくて、ヒロインたちが劇中で役者として別のキャラクターを演じるからですよね。髪型や服装なんかも変えて。さらに時の経過で老けメイクが加わるので、あれ?このおばさんはどのおばさんだったっけ?ってなるのよねー。整理してみた。反転させると結末までのネタバレがあります。

・ケイデン(フィリップ・シーモア・ホフマン)

主人公 劇作家 持病がいっぱい
奥さん(アデル)と不仲→奥さん娘ベルリンへ→ヘイゼルといい感じ→マッカーサー賞受賞・脳内NY構築開始→クレアといい感じ・実父の死→クレアと再婚、娘アリエルをもうける→娘オリーブに未練、クレアと不仲・別居→アデル家の掃除、ヘイゼルとサミーに嫉妬→実母の死・タミーとセクロス→ヘイゼルと何十年越しかのセクロス・ヘイゼルの死→劇作家としての枯渇→掃除婦役として劇指導される立場に→??死??


・アデル(キャサリン・キーナー)

主人公の妻 ものすごい細密画を描く画家
ケイデンと不仲→親友マリア(レズビアン関係?)娘オリーブとベルリンへ→複数の男女と関係→NYへ戻る、31階の部屋・掃除婦エレンとの友情→病死?


・オリーブ[子供](サディ・ゴールドスタイン)[大人](ロビン・ワイガート)

アデルとケイデンの娘
幼少時にベルリンへ渡ったためドイツ語が母語。11歳の時マリアに刺青を施されて「フラワーガール」となる・マリアとレズビアン関係→風俗嬢→ケイデンを同性愛者だと思っている、刺青の花が枯れ、病死


・ヘイゼル(サマンサ・モートン)

劇場の受付嬢 ケイデンとといい感じ
→ケイデンがヘタレなので自然消滅、火事の家に住む、デレクと結婚→子持ち、メガネ店勤務→失業、ケイデンの助手→サミーといい感じ→ケイデンとセクロス→事故?死


・クレア(ミシェル・ウィリアムズ)

女優 ケイデンといい感じ
クレア母の死→ケイデンと結婚出産(アリエル)→ヘイゼルをモデルにした売り子の役→クレア自身の役(相手役はサミー)→ケイデンと不仲、別居


・サミー(トム・ヌーナン)

ケイデンのストーカーじじい→ケイデン役の男優
→ヘイゼルといい感じ→ケイデンにかまってもらえなくて自殺


・タミー(エミリー・ワトソン)

クレアの降板と交代・ヘイゼル役の女優(相手役はサミー)ドライな女性
ケイデン母の葬式後(また葬式後かよ!)セクロス


・ミリセント(ダイアン・ウィースト)

掃除婦エレン役の女優
→サミーの死後、ケイデン役として、掃除婦エレン役となったケイデンに演技指導 パートナーはエリック??


・マリア(ジェニファー・ジェイソン・リー)

アデルの親友
兼レズビアン関係? オリーブの父親的存在→刺青を施す→オリーブとレズビアン関係に


・マドレーヌ(ホープ・デイヴィス)

謎のカウンセラー 著書多数

ネタバレ度さらに高くなるのでたたみます


2回目を見てもまだよくわからないのは、やはり終盤、掃除婦エレンが登場して以降の展開かなあ。エレン役であった、ミリセントがサミーの代役でケイデンに、ケイデン自身が掃除婦エレン役を演じるようになることは、老いてセックスアイデンティティすら曖昧になっていく、ということなのだろうか。ところで、死の床についた娘オリーブに断罪されるケイデン「あんたはホモで、エリックとアナルセックスをしたあやまれ!」と言われてました。誰だよ、エリックって!しかもこのホフマンちゃんはインポかもしれんがホモではないし同性愛者なのはあんたがたの方でしょうが。というツッコミで爆発しそうだったんだけど。出てくるんですよねー、エリックという男。ミリセントのパートナーとして。→
このときのミリセントはケイデン役を演じているのかどうなのかちょっとわからない。女性装なので、ホモセクシュアル的な関係を示唆しているのでもなさそうなんだよね。今のところここが一番気になる謎ですね、個人的に。

  • IMDbに載っていた劇中の年表。(ネタバレ)

50年も経っていたのか。冒頭から体調を崩して結局90歳くらいまで生きてたのかよしぶといよケイデン!
[参照]FAQ for Synecdoche, New York http://www.imdb.com/title/tt0383028/faq

2006 - 物語の始まり(ケイデン40歳)
2009 - マッカーサー賞受賞
2015 - 倉庫を購入(「脳内ニューヨーク」の構築開始)
2025 - サミーをケイデン役に配役
2031 - ミリセントをエレン役に配役
2032 - サミー自殺
2035 - ヘイゼル事故死
2041 - オリーブ病死
2048 - ミリセントをケイデン役に配役
2050 - ケイデン、エレン役を演じる
2055 - ラストシーン

  • サミー様がみてる

2回目以降見る方なら見ると絶対気づくんだけど、超序盤からストーキングしてるサミーが画面に映ってるんですね。ふふふ。
じっ

木陰から

娘との散歩も見られてます

なんで葬式にいるの

いつだってさりげなく

嫁とセックスしてるのにガン見!!

ストーキングといえば「俺たちフィギュアスケーター」のストーカー君も思い出すなあ。歪んだ、ゆえに純粋な愛。ケイデンに直接接触するまでは純愛だったのに、ケイデンからの見返りを期待してしまったから、自殺という行為に及んだのかな。

  • 映画内に登場するケイデンのイメージ


テレビアニメ。歌の歌詞は、あなたが死んだら誰かが泣くけど別れた妻は泣かない〜などという悲壮なもの。


薬のCM。この映像には終盤に登場するエレンの過去のイメージ(母娘)も出てくる!


バス停のポスター(カウンセラーの紹介していたLittle Winky)

ケイデンが、フィクションの中に自己投影をしやすい、という描写なのかな。

  • 参考リンク

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脳内ニューヨーク Synecdoche, New York - 映画作品・映画人::unkar
姫のお楽しみ袋 『脳内ニューヨーク』-60になったらもう一度観てみよう

続くかも