タラデガ・ナイト オーバルの狼 が萌え映画であったので布教したいのよ

ぶっちゃけますと、「ボラット」で惚れた俳優サシャ・バロン・コーエンの出演作ということでチェックしたら、丁度「カーズ」にハマっていた時だったのもありストライクであった、と。それだけです。


NASCARを題材にしたコメディ映画です。私はNASCARというものをサウスパーク(Poor and Stupid)とカーズの劇中くらいでしか見たことなかったので、実写で見るとおおー、こんなもんか!という感じで非常に面白かったぞ。(実際のレースファンから言わせると全然違うよ、という指摘は置いておいて)
特にピクサーのカーズが好きという方には是非ぜひ観ていただきたいです。私と同じようにNASCAR見たことないよ、という人は、カーズのレース描写にでてくる観客(車)やピットクルーの雰囲気なんかがそのままだ!と嬉しくなること間違いないですし、実写のレースシーンも迫力があって興奮します。
それに、オチに関わる事(後述します)ですが、カーズのそれに、非常に似ているんですよ。似ているようで全然違うの。すごくよいラストになっているので是非。ちなみにカーズとタラデガは公開時期も非常に近い。2006年の7月と8月だって。ほへー。よって当然のことながらこういった予告編混ぜ混ぜMADなんかも作られていました。うーん、違和感ない。(ってどっちも観ていないと分からないか)

  • コメディ映画の例に漏れず、キャラクタが濃ゆくて魅力に溢れているのでとりあえず紹介。(反転でネタバレっぽいこと)


左から、カーリー、キャル、リッキー、ジャン、ルシウス
◆リッキー・ボビー
主人公。演じるのは俺たちフィギュアスケータージョン・ヘダーと組んでたウィル・フェレル。幼い頃父に吹きこまれた「一位じゃない奴はビリだ」という信条を信じてる。ひょんなことから才能が開花しNASCARのトップスターになる。が、ジャンとの対決に大クラッシュを起こして敗れ去り、車に乗るのすらトラウマになって落ちぶれる。バカ。だが彼を凌駕する圧倒的なアホに囲まれているためマトモに見える。
自分が勝利する為に親友を踏み台にするのが当たり前、それで親友も自分も幸せだ、という事に疑いを抱けなかったのが一番バカである所以ですね。親友の方もアホなので、自分たちの関係がいかに病的なものかを理解していないんですけど。ここ、萌えポイントです。最後には、親友の事も、一人のライバルとして見る事ができるようになりました。おめでとう!親友と末永くお幸せに!
バカなので、友愛と、もう二度と帰ってくんなよ!という気持ちを表すためにゲイに口チューをかまします。クライマックスで。ああ素晴らしい。

◆キャル・ノートン
演じるのはマグノリアの警官役をやっていた小太りヒゲ、ジョン・C・ライリー。このひとがこんなコミカルな役をしてるの初めてみたかも。主人公の幼少時からの親友にしてチームメイト。…親友?常人の想像する親友の域を軽く超えている。リッキーとの二人だけの合言葉は「シェイク・アンド・ベイク♪」事あるごとに「愛してる!」を連発するし。リッキーには奥さんも子供もいるのに何故か同居してるし。心の底からリッキーを愛しているっぽい。天然、アホ。
奥さんを寝とって家を追い出しておいてなお、リッキーの事を親友として愛するキャル。「お前とは絶交だ」といわれて「なんで?」と返しちゃうキャル。「お前は仕事と女房を失った。その上親友まで失うな」と。天然なんですよ…。これは萌えですよ。傍から見ると訳がわからない事になってるけど、純愛としか言いようがない。普通そういうのってヤンデレ臭が漂い始めるものだが、あっけらかんとしているのが逆に斬新。お前がいなくて寂しいんだ、と言って電話かけてきちゃう。カワイイ系マリオ…。
◆ジャン・ジラール
おフランスはフォーミュラ・アンからやってきた凄腕レーサー。演じるのはサシャ・バロン・コーエン。旦那さんもいらっしゃるガチゲイなお方。レース中の車の中でカプチーノ飲んだりカミュを読んだりする。ほぼいつものSBコーエン。変人というか超人。
ちなみにジャンとリッキーのキスシーンは2007 MTV Movie Awardsのベストキス賞に輝いた…。授賞式の様子はこちらhttp://www.milkandcookies.com/link/62763/detail/素晴らしい、素晴らしすぎる…
・ちなみにちなみに旦那さんの人は足フェチ小動物の中の人、アンディ・リクター。こんなところにマダガスカル繋がりがあって小躍り
実はリッキーに打ち負かして欲しいと思っている。最後はキッスのおまけまでもらって幸せそうだ。
◆カーリー
リッキーの嫁。金と勝利に食いつくブロンドビッチ。飯は作らずファストフード、育児は放任主義。だが、何故か憎めない男前。
多分、計算高い悪女ではなく、この人も本能で生きているアホっぽいからであろう。リッキーが落ちぶれてキャルの方に文字通り寝返る。
◆ルシウス
リッキーチームのクルーチーフ。黒くていい人。この話の中ではかなりマトモな人物。
女装癖はあるらしいが


◆ウォーカーとテキサスレンジャー
リッキーの息子兄弟。変な名前の理由は「カッチョいいから」。壮絶なまでに口が悪い糞ガキ。ショタ可愛いですぺろ。
おばあちゃんに更生させられ、エンドロール後は生まれ変わった姿を見せる。



◆スーザン
リッキーのアシスタント兼ベビーシッター?冴えない眼鏡っ娘
だが、典型的な「眼鏡をとると実は美人」型の変形をするので注意。個人的にはバーでリッキーと急接近するときの唐突に化粧が濃くなったスーザンより、最初のちんちくりんな彼女のほうが100倍魅力的だと思うが


◆ルーシー・ボビー
リッキーのママ。男前なおばあちゃん。糞ガキな孫を鍛え直したりする。

◆リース・ボビー
リッキーのパパ。超絶イケメンジジイ、なおかつ人間のクズ(萌えポイント)。リッキーのトラウマ復帰を駄目な感じに手助けしたりする。
ピザ配達にやってきたリッキーの指摘「手をつけてないピザが三枚も」に「お前に会いたいのに他の奴が配達に来たからだ」とこともなげに答えるジジイ、なにそれ漏れる、惚れる。
「俺は生まれつき幸せを楽しめない人間だ」愛とか家族とかぬくもりの中に居るとそれに窒息してぶち壊さずにはいられないという真性のクズ人間。駄目萌え。こここの映画一番の泣き所ですね。
父親にレースを見て欲しくてリッキーがずっと取置きしていたチケットを、ようやく受け取ったかと思ったら次の瞬間ダフ屋へと転じるブレないクズさがもういっそ潔い。イケてるぜジジイ!

  • カーズのラストとの対比(カーズ、タラデガ、両方のラストに触れてますネタバレです)

カーズのラストバトルでは、王者であるキング、万年二位のチックス、そしてスーパールーキーである主人公マックイーンの三車の対戦になり、最後にチックスとキングが接触事故を起こして、キングが大クラッシュ。マックイーンは二車を抜く形で優勝するかと思いきや、一位でゴールする栄冠を捨てて、レース続行不可能であるキングを押してゴールします。結果はチックス、キング、マックイーンの順。チックスはついに悲願の一位になって喜びますが、周囲からは総スカンをくらい、一方マックイーンはキングの名誉をまもった思いやりのある英雄として祝福されます。
タラデガのラストバトルもまた、最終的に三つ巴の戦いになります。現ナンバーワンのジャン、万年二位の親友キャル、そしてリベンジを狙う主人公のリッキーです。キャルはジャンを勝たせたいオーナーに、リッキーをクラッシュさせろ、との司令を受けますが、親友にそんなことできない!と反発し、逆にリッキーを勝たせるため、力を貸します(この技やってるからこそ万年二位なんですが)。キャルの助力によりジャンとリッキーの一騎打ちになりますが、最後の直線で両者接触により大クラッシュ。しかし、二人共車から降り、生身で走ってゴールを競います(普通だったら死んでる)。掌の差で勝ったのはリッキー。リッキーはトラウマを克服しての勝利とリベンジの願いが成就し、ジャンは「力のある好敵手に本気で打ち負かされて引退したい」という願いが叶ってリッキーに感謝の気持ちを打ち明けます。そして、レースとしては、前記の二名がレース中に降車するという行為により失格となり、三位でゴールしたキャルが優勝という結果に。初めての勝利にキャルは喜び、リッキーも観客も皆がその勝利を祝福します。
私、以前からカーズのヒック・チックスが不憫でならなかったので、このタラデガのラストは本当に福音でありました。だって普通あそこでゴールするよ。それがレースだろうwまあキャル→いい奴、ヒック→やな奴なんだけどね。でもヒック、可哀想じゃないか。

  • 追記

カミングアウトゲイ(しかも既同性婚)に対して、あからさまに偏見的な反応をするシーンとかがあるので、もしかしたらうるさ目のゲイ団体とかからは男色を、じゃねえ難色を示されているかもしれません。そのへん調べてないんでわかりませんが。
ていうかこの映画、車=南部=カントリーミュージック=保守、のコンテクストで描かれているのでしょうがないかと。サウスパークで、NASCARは貧乏人とバカのスポーツ、と言われてるのも少々過激ですがそれなりの論拠はあると思うのですよ…。主人公たちが結構敬虔なのも…とか色々考えちゃいますね。きりがないです。アメリカ社会学を勉強したら面白そうだとは常々思うんですけどねー。

もし誰かタラデガ見たら萌え語りのお相手させてくださいねー!