Swiss Army Man(原題)がこのBL映画がぶっちぎりで優勝2016である①

この映画の最初のオナラで君は笑い、最後のオナラで君は泣くだろう。(監督の煽り)※この記事では腐の私がああ~~BLだなぁ!という解釈の基で綴らせていただきますので嫌な人は読まないか読んでも文句を言わないこと。ネタバレ度は小~中で、この記事には映画前半の事しか言及しません。それから和訳は割と適当なのであしからず。予告編どうぞ↓

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Swiss Army Man、アメリカの劇場公開時に1回見て大号泣し、Blu-rayを買って数回見てまた大号泣し、これが私の求めるBL映画のある意味最高峰だと確信しましたので、日本でなんとか見られるようになって欲しいな、という願いも込めて紹介や感想などをメモしていきますよ。

監督は無名の新人(多分)のダニエルズ。ダニエルという名前を持つ2人のコンビ監督ですね。白人とアジア系、ひょろっと背の高いダニエルと顔が丸くて小柄のダニエル。もう見た目からしてああ…という感じだ(何だそりゃ)。
出演の方はポール・ダノ(愛してる!)とダニエル・ラドクリフa.k.aハリーポッター(3人目のダニエル)で、こっちもまたノッポとチビの凸凹コンビなんだけど、ラドクリフは死体の役で自力で立つのもままならないキャラなので、フィルムの中ではあんまりその身長差がわからないよ。プロモーションの写真を掘れば身長差20センチに萌えることができます。

ストーリーはほぼ全編この二人のキャラクターだけで進んでいきます。自殺願望を持つが一歩のところで踏みとどまり俗世への帰還を望むヘタレ負け犬のハンク(ポール・ダノ/特技はゴミや自然物を利用した工作と女装)、そんな彼の前に現れたスイス・アーミー・ナイフのごとき万能死体のマニー(ダニエル・ラドクリフ/特技は色々なので後述)。無人島で彼らは出会い、死体が吹き出すオナラのジェット推進力によって無人島を脱出、流れ着いた先は明らかに大陸ではあるものの、彼らを救ってくれる人のいる気配がなく人里を求めてまた彷徨うことに…というのが映画の冒頭なわけだが、そう、既にこの一文に頭のおかしい箇所がありましたね?

<死体の吹き出すオナラのジェット推進力によって無人島を脱出>…そうそれだ。このオナラこそがこの映画の荒唐無稽かつ愛すべき点なんだけど、冗談ではなく本当にオナラで始まってオナラで終わるし、オナラで泣ける。オナラは愛なんです。何を言っているかわからないと思うが…。シモの話がたくさん出てくるけれど単に下品な笑いを提供したくて持ち出しているわけではないのです。それは人生とは何か、愛とは何かということに直結しているのです。ますます何を言っているかわからないと思うが…………。

ちなみにこの<死体の吹き出すオナラのジェット推進力によって無人島を脱出>という小学校低学年男子に大受けコロコロコミックのような馬鹿丸出しシーンで、タイトルロゴが感動的な音楽と共に画面にバァーーーン!とinするのですが、呆気にとられるか爆笑です、しかしこれが何故か美しくて涙が出てくるという人種が自分の他にも世界に一握りほどはいると信じたい。最高なんだ。ラドクリフの毛深い尻*1大写しになるけど。

さて、無人島脱出後が彼らのサヴァイヴァルの本番なわけですが、高く高く繁るレッドウッドの鬱蒼とした樹海の中、*2最初はオナラジェットだけだった死体くんの秘められた能力が次々に明らかになりつつ、二人の冒険が続いていきます。

f:id:AyakA:20161013044530p:plainI DON'T WANT TO DIE ALONE


「一人きりで死ぬのは嫌だ!」という強い願いに呼応するように現れた死体なだけあって、唯一の話し相手である死体くんに親しみをこめて語りかけるハンクですが、ここで嬉しい奇跡が。なんとお喋り機能が解禁になります。まあ喋るよね、ぶっちゃけ喋らない死体ならわざわざダニエル・ラドクリフを起用する必要ないし…。
というか、その前にそもそも正常な精神の持ち主であれば、無人島から脱出できた時点で、謎だらけのオナラ死体は必要無くなるんだから海岸にでも捨てていけばいいものの、わざわざ成人男性の重さの肉の塊を背負って生還を目指すという行動選択がハンクくん完全にイッちゃってて微笑ましいです。

さて喋り始めた死体くんは、自分の名前が<マニー>だという事は辛うじて分かったもののそれ以外の生前の記憶がなく、それどころか常識や人間の生活がどんなものかすら何処かに忘れてきてしまった様子。ということは、人間の生活とは何か、いろんな事を手とり足とり(文字どおりにしないと死んでるから自力でも動けないし)教えてあげなきゃいけないのね、なるほど捗るね。ハンクはマニーが生前の記憶を取り戻せるようにお世話を焼いてあげることにしました、よかったね。


万能死体の特殊能力は、ハンクとマニーの友情、というか愛が深まるごとに一つづつ開放されていくのが面白い。例えば『勃起したちんちんが人家の方向を指すコンパス能力』は、ハンクが森に捨てられていたエロ本を使ってマニーにマスターベーションを教えてあげた事がきっかけになる。
ここで、性愛に目覚めたマニーは、ハンクの持っていたスマホの壁紙に写った女性の写真を見て「彼女のこと知ってる気がする…彼女についてなにか思い出せたら、絶対家に帰る手助けになるから」と言って、ハンクに写真の彼女とのロールプレイをリクエストします。さすがにこんな事してる暇もないし馬鹿馬鹿しいし、と断ろうとするんだけど、どうしても、というマニーのお願いを断りきれず、しぶしぶ女装。やったぜ。

「なんてことだ…」

「ごめんよ…似合わなくて」

「君は美しい!」

「!?!?美しい??僕が??」

「当たり前じゃないか」

「?!マジで??(思わずニッコリ)」

というなんとも微笑ましいやり取りの後、じわじわとごっこ遊びにノリノリになってきたハンクは、<彼女>とマニーの恋愛シミュレーションのために樹海の中で見事な舞台セットを作り上げ(ここの舞台美術に俺アカデミー賞をあげたい)、伸びっぱなしだった髭も剃って本気で女装&女役を演じ、同時に時には友人としてマニーに恋愛アドバイスを捧げたりします。
一般常識がないマニーは「さあ今だよ彼女に話しかけてみて!」と背中を押されれば

「こんにちは。何故かはわからんが突然俺の口と君の口を結合させてみたい衝動に駆られたよ」

「それはキスっていうんだよ、でもダメだよ性急すぎる」

「俺のペニスを君にハメてみたいよ、はどうだ?」

「なおさら悪いわ!!とりあえずセックスから離れてくれ!!」

などという軽妙な漫才が繰り広げられるので是非とも日本語吹き替え作って欲しいと強く思いますね…。

この一連の恋愛ごっこシーンが本当にBLとして切なく美しい。視覚的なイメージも然ることながら、BGMの使い方も最高なのです。マニーがバスの中でイヤホンをつけて聞いている(という設定の)Cotton Eye Joe(アメリカ民謡カントリー曲のアレンジ)→恋に落ちる瞬間に弾けるジュラシックパークのテーマのなんて甘美な響き!ジュラシックパークのこんな使い方はアラサーBLならではの大発明ですよびっくりした!脚本としても秀逸。ハンクは友人のハンクと想い人のサラ(<彼女>の名前です)の二役を演じているので、マニーはそれに合わせてハンク、って呼びかけたりサラ、って呼びかけたりするんだけど、これが切ない。本当なら誰かに愛されたいのはハンク自身なのに。でもハンクはマニーにアドバイスしながら、自分が元の生活で失敗し続けた異性愛のリベンジをしているんですよねえ…

「ダメだ彼女は美しすぎる!話しかけるなんてとてもできない!君ならどうするんだハンク」

「僕なら…多分、待つよ。彼女がバスを降りるのを見て、家に帰って、ピザを一箱やけ食いかな。……ごめん、本当のこと言うと僕もこういうの得意じゃないんだ…」

「なるほど、誰も君を愛さないな」

ある意味では喋る死体も自分が操る自分の分身みたいなところがあるので、自分×自分×自分みたいになっていて考えれば考えるほど何だこれ…。

f:id:AyakA:20161013032910p:plainらぶらぶ♡地鶏

何度かのトライのうち、勇気を出して彼女に話しかけ、恋愛を成就させたことで、またもやマニーが新たなパワーを得ます。愛が深まると力を得る。それはキャンプには欠かせない発火装置だったり、マシンガンだったり、ぎこちない笑顔だったり、女性との会話能力だったり…。ハンクの方は、マニーの(彼の過去の両親に関するトラウマを癒やすような)口説きに完全に屈して、女装した姿では恋愛を、本来の姿では友情を同時進行で深めていきます。めちゃくちゃ尊い。所詮お人形ごっこなんですけど…だからこそ尊いんだ。男の子のするお人形ごっこは口からマシンガンを発射してアライグマを殺す!とかカラテチョップで木をぶった斬る!とかなのがとてもおバカでグッドです。ちなみにここの樹海のセットや、ハンクとサラのロマンスの情景は覚えておくと後でいいことがあります。


Swiss Army Man | Montage of 'Montage' | Official Lyric Video HD | A24

爆ぜよポップコーン!アライグマを殺せ!

コレって恋かな?

今僕らに必要なのはモンタージュ!

 

(´-`).。oO(続けたいと思う!

*1:メイキングを見るとこれは精巧な尻模型だとわかるのだが

*2:北カリフォルニア・うちから車飛ばして5時間くらいのところで撮影したそうですよ